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世界で一番暑い夏

夏。
もくもく入道雲。
風鈴が運んでくる涼風。
ときめきのこの季節。
当時、何故か私は
どこの大学にも合格できず
浪人形となる。
特別な夏。
夏期講習
お受験本番に向けて
周囲は燃え上がっている。
夏を制するものは
お受験を制する。
でも…
お受験本番まで7ヶ月もある。
そうまだ、焦る時間じゃない。
お受験よりも何よりも
当時の私は、 
モノホンの麻雀に飢えていた。
毎日のご飯代金として
親から700円支給されていた。
3つ100円のコロッケとおにぎり。
水を飲んで残りのお金は
大好きな麻雀のために使う。
予備校のあとゲームセンター
にお邪魔すること。
そこで、麻雀ゲームをすることが
その頃の唯一の楽しみ。
50円使って
二次元なアイドルと
タイマンでの対局。
そのアイドルとの
激戦のなかで、手役などを
勉強してゆく。
現在やるべき勉強は
それじゃないでしょ?
わかっちゃいるけど
やめられない。
麻雀のことばかり考えて
すげえ勢いで時が流れる。
受験参考書のかわりに
哭きの竜、を愛読。
意味は全然わかんないけど
雰囲気に酔いしれる。
チーって何?
ポンって、かわいいひびき。
講義中もノートの隅に
大三元、とか
国士無双、とか
落書きする始末。
とにかく役の呼称が
かっこいい。
イーシャンテンの言葉の意味を
知ったとき、なるほど、なるほど、
感動を覚えた。
ああ、ホンモノの麻雀が打ちたい。
神様お願いします。
頭の中は、麻雀でいっぱいだった。
ある日、旧友のKたん氏に、
同じ浪人形の友人T氏とともに
焼き鳥をご馳走になる。
3人で、とろけるような
焼き鳥と、
大人の味のする
ビールを煽る。
日々700円で、お昼と
おやつと麻雀(ゲーセン)を
全てやりくりしている
貧している私。
豊かではない我々に、
モノホンの焼き鳥を
食する経済力はない。
同級生のKたん氏は、
知ってか知らずか、
何かにつけて
我々にご馳走してくれてた。
焼き鳥とビールでとても
しあわせいっぱいの
我々は千鳥足で、帰路につく。
その道中、
麻雀の話をする。
麻雀が打ちたくて仕方ない。
ホンモノの麻雀を打ちたい。
本音をぶちまげる私。
麻雀を打って、
日々をエンジョイしながら
それでも志望校に
合格する物語がよい。
そんな、私のクズ全開の
青春の叫びに、
Kたん氏が答える。
「今から、家で打つか?
牌ならあるぞ?」
え?
えー!
ウソウソウソ!
やったー。
麻雀が打てる。
麻雀が打てる!
麻雀が打てる!!
嬉しくて、跳び跳ねそうだった。
二次元ではない麻雀。
立体のやつ。
まじか!
言ってみるもんだわ。
T氏をいれても3人しか
いないのだが、私の知ってる
麻雀は、だいたい2人で
打つものなので
抵抗はなかった。
麻雀は4人で打ったほうが
楽しいということは
後の時間で知ることになる。
やらなければならないことは
わかっている。
でも、ままならないのが人生さ。
親の心、子知らず。
駆け出しそうになる
気持ちを抑えて
私は、Kたん氏の
自宅へむかう。
空には、夏の星座が瞬く。
夏の風がワクワクを連れてくる。
この時、
「いや、今やるべきことは
受験勉強だ。
おれは、帰るぜ!」
と、答えていれば、
多分、未来は変わっていただろう。
(つづく)

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