恐怖の代走 完結編 [つかぴょんの麻雀小説]
つづきです。
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トイレから出てきた無法者は、まっすぐこちらに戻らずに、他の卓にちょっかいを出している。
今日はついてねえ、みたいな会話を交わしている様子が、遠くにうかがえた。
ついてないのは、こっちのほうだ。
心の中で私はそう叫んでいた。
「早く、誰かあがってくれ」
その私の満身の願いが天に届いたのか、上家から5000点棒でリーチが刺さった。
「おう、5倍のリーチだ、ケケケ」
「おい、若いの、両替してくれ」上家は、5000点棒を私に投げてよこした。
たのむから余計な仕事を増やさないでくれ。内心イライラしていたが、速やかに両替をして、ツモ山に手をのばしかけた、そのとき。。
おう、振りこんでないだろうなあ?
と私の背後より、声がかかる。
「きたーーー」
奴が帰ってきた。背後に修羅の気配を感じる。
「もうその局はおまえにまかせた、振るなよ」念を押し、無法者は私の背後の小さな椅子にドカッと座った。
私の手牌は 東東東ポンの ①③③③234七七
マンズの七七の部分を右手で力強く隠していたので、後ろから観ている無法者は、①③③③234七八九の聴牌と思っているはずだ。
だから、②や①が出たり、②や①をツモッたりすることが一番困る。
「何であがらないんだ!殺すぞ」となるに決まっている。
まあ、あがらない、じゃなくて、あがれない、なんですけどね、小牌だから。
ここで持ってきて欲しいのはダークドラゴンクラスの危険牌だ。
「あ、これはもう、代走なら切るわけないよね」みたいな牌。
祈るようにツモ山へ手をのばす。ツモ牌が、後ろから見えぬよう、ぐりぐり盲牌する。
もし、その牌が①や②だったら、ふせたまま、上家のリーチの現物である4ソウを抜き打つつもりだった。
盲牌した感じでは、縦に線がいっぱい入ってる。
なんだっけ?これ?。六ソウかな?と思って開くと、9ソウだった。
ちなみに私は、盲牌もへたくそである。
リーチ者の河には、4.5巡目に8ソウ7ソウが逆切りしてある。
手出しとか、ツモ切りとか全然見ていないので、捨て牌読みの根拠にはならないけれど、4ソウも切れているし、9ソウはいかにも安牌チック、とおりそうだ。
だがしかし、聴牌を壊すチャンスは今しかない。千載一遇のチャンス。
私は、後ろの無法者の良く見えるように、ツモッてきた9ソウを手牌の左側に留め、
「この9ソウを持ってきたから降りるんだ、良く見とけ」とばかりにリーチの現物の4ソウを抜き打った。
絶対に振るな!、というご主人の言いつけを忠実に守る形となったのだ。
「一発ツモ、6000オール」12345678②③④⑤⑤ 3ツモ。
ドラを大切にした為、面子過多のソーズの上を払ったのだろう。リーチ一発ツモピンフドラドラ。
9ソウを切っていたら、18000点。18000発位は殴られていただろう。
いろいろな意味で、即死はまぬがれなかったと思われる。
6000点を点ハコから、一発のご祝儀2000円を無法者のカゴから払い、9枚の手牌を全力で全自動卓の開口部に叩き込んだ。
証拠隠滅。助かった。
奇跡の生還。生きてるってすばらしい。
無法者と交代すべく席を立つ私に、声がかかった。
「おう。若いの。よく9ソウ止めたなあ。たいしたもんだ。」
無法者は私を褒め「、なんか、食え。」と1000円札を手渡した。
「ええ、小牌ですから」なんて、答えるわけにはいかないので、軽く会釈をして、「バイトにいきます」と雀荘を離れた。
その1000円はなんだかものすごくくだらないことに使った記憶がある。
また、チョロチョロその雀荘に顔をだして、常連達から「あの時小牌していただろう?」なんて言われたら、目も当てられないので、2.3ヶ月は店には近づかないようにした。
今でも、思い出し、考える。
あの時の私の小牌は既にバレていたのではないか、などと。
今でも小牌の夢は寒い日なんかに良く見る。まったく持って忌まわしい記憶だ。
でもね、よくよく考えると、悪いのはどう考えても、私である。
今、この場を借りて謝罪します。
小牌してごめんなさい。
END
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今週のつかさ会は3/20(日)
小田急線本厚木駅近くの「楽遊」です
AM10:00スタート、夕方くらいまでやってるので一緒に打ちませんか?
そのまま、会場にいらっしゃって
「つかさ会に参加します。」
と、お店の人に声をかけてください。
観戦、無料。
半荘1回、300円です。
「今日は、おれ、おかねないっす。」
という方も、気軽に覗いてみてください。
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