邂逅3 [つかぴょんの麻雀小説]
その大男の名前は、「ひろりん」というらしい。
翌日、私は、その男、「ひろりん」を探すことに終始した。
電話帳を広げ、まず、たまに出没する可能性のあると訊いた、K区の麻雀道場の住所を探した。
麻雀道場であれば、低レートで卓が立っている可能性が高い。
できるだけ、種銭を使わずに「ひろりん」と再戦したい、というのが、私の本音だ。
私は 電話帳に、麻雀教室の名前を見つけた。
麻雀道場ではないけれど、それらしい表記は他には見当たらない。
私は、その麻雀教室に足を運んでみることにした。場所も非常にわかりやすいところにある。
麻雀の必勝法は、絶対に自分より、弱い人間と打つこと。
弱い人間とは、大局観を持たない人間のことだ。
目の前の一局だけに捉われた麻雀を打つ人間は、ミスも多いし、ミスを怖がらない。
自分の手だけを見ている人間の麻雀を、怖いと思ったことはない。
だが、「ひろりん」は自分の手牌には、一瞥もくれず、他人の捨て牌をじっとみていた。
全然敵わないことなど、百も承知だ。
けれど・・・。
今、思えば、私はおそらく、もう、「ひろりん」の麻雀に魅了されていたのかも知れない。
時刻は、午後8時。そろそろ頃合だ。
私は、その麻雀教室のドアを叩いた。
「こんにちは」
「ひろりんさんと、打ちたいのですが・・・」
短刀直入である。今思えば、なんと無礼な振る舞い。まるで、道場破りである。
教室内では、昭和の匂いの漂うサラリーマンが、麻雀談義を繰り広げている。
麻雀の為の空間、という感じだ。活気のある喧騒。
教室の経営者らしき男が、私に返す。
「ひろりん・・?ひろりん先生なら今日は来ないよ」
「ひろりん先生に会いたいなら、また明日・・・、そうだな、午後7時位においで」
先生?あの雀ゴロの化身のような男が、先生・・・?
私は、なんだか不思議な気持ちで、この日は、帰宅して出直すことにした。
なんとなく、牌に触りたくなり、その後、楽園に向かった。3半荘くらい打って帰宅した。
翌日、午後6時半くらいに、教室に着き、私は、「ひろりん」を待った。
教室内では、90符がどうした、とかそんな話題ばかりが、飛び交う。
ドアが開く。
おとといと同じ雰囲気で、「ひろりん」があらわれた。
つづく
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